ウィルスとガンの関係から考えるがん発生の原因とメカニズム

細胞

ガンの原因になるウィルス

自己複製遺伝子を持つウィルスは、生物と無生物の中間的な存在とされ大きさは1万分の1ミリ程度とされています。

一番大きなウィルスでも千倍にしてようやく見える程度の大きさです。

通常の生物と違い、ウィルスには動物などの細胞の助けを借りないと増殖できないという特徴があります。

ウィルスには自分を複製するのに必要な遺伝子とそれを保護するタンパク質の殻で出来ている単純な構造になっています。

ウィルスの遺伝子は、DNAかRNAのどちらかの遺伝物質からできておりDNAのものをDNAウィルス、RNAのものをRNAウィルスと呼びます。

DNAウィルスの仲間には、風邪を引いたり体力が低下した時などに水疱をつくる単純ヘルペスウィルス、夏風邪の原因となるアデノウィルスなどがあります。

一方のRNAウィルスが関係する病気で最も有名なのはインフルエンザがあります。

これは、インフルエンザウィルスの感染によって引き起こされます。

ウィルスの仲間には、ほとんど病気に関係ないものもありますが、中にはガンを引き起こすウィルスも知られています。

<h3>・動物にガンを発生させるウィルス

DNAウィルスには人から分離されるアデノウィルスなどがあります。

このウィルスは人にはガンは誘発しませんが、ハムスターなどに摂取すると肉腫が発生します。

RNAウィルスの仲間では、レトロウィルス科のオンコウィルスと言われるグループでは次の種類のウィルスが知られています。

  1. 肉腫ウィルス
  2. 急性白血病ウィルス
  3. リンパ性白血病ウィルス
  4. 乳がんウィルス

などがあり、肉腫ウィルスや急性白血病ウィルスは強力なガンウィルスです。

例えば、肉腫ウィルスを動物に摂取すると1~2週間でほぼ全て肉腫が発生すると言われています。

同じように急性白血病ウィルスも約1ヶ月で白血病を引き起こすと言われています。

このように、動物から分離されるガンウィルスには強力な発ガン能力をもつから弱い発ガン能力しか無いものまで様々な種類があります。

人のガンに関係するウィルス

DNAウィルスの仲間では、B型肝炎ウィルスが肝癌に関係があるとされています。

また、ヒトパピローマウィルス子宮頸がんや陰茎がん、外陰がんにEBウィルスがバーキットリンパ腫や上咽頭がんに関係があるとされています。

これに対して、RNAウィルスの仲間では、HTLV-1が成人に発生する白血病の一種であるT細胞白血病に関係しています。

その他、肝癌にC型肝炎ウィルスが関与しているともされています。

現在ウィルスが関係すると考えられるがんによる死亡者は全がん死亡者の約15%に相当するとされています。

特に肝ガンや子宮頸ガンの場合は、患者も多く、重要なものです。

・ウィルス感染によるガン

・肝ガンとB型肝炎ウィルス(HBV)

肝臓に発生するガンのおよそ9割は肝細胞ガンとされています。

肝がんの発生に関係がある因子として、ウィルス感染、輸血、飲酒、米に生えるカビ、などがあげられます。

ウィルス感染では、B型肝炎ウィルスやC型肝炎ウィルスと肝ガンとの関係が疫学や分子遺伝学的に研究が進められています。

HBVの保有者の多くは、アフリカ、香港、中国などでは肝ガンの発生率が高く逆にキャリアの少ないアメリカやイギリスなどでは肝ガンの発生率が低いとされています。

日本では、HBVキャリア数は約300万人と言われています。

また、肝ガンの組織の中にはHBV遺伝子が存在している頻度が高いとされています。

ウィルスの主な感染源は、このウィルスを含む血液であるとされています。

感染経路としては、輸血、汚染された注射針、性行為、出産時の母子感染であるとされています。

・母子感染

母親がこのHBVのキャリアで、出産時に血液中に感染症ウィルスが含まれている場合HBe抗原陽性の場合は、生まれる子供の9割がキャリアになると言われています。

HBVキャリアの内、約10%は慢性肝炎に移行して、さらにその一部は肝硬変、肝ガンへと進行します。

HBVキャリアが肝癌になるリスクは、陰性の人の200倍とされています。

最近では、母親が陽性の場合は、抗HBVヒト免疫グロブリンやB型肝炎ワクチンの使用によって、母子間の感染を防ぐことが可能になっているとされています。

HBV以外で肝ガンに関係するウィルスとして、C型肝炎ウィルス(HCV)が注目されています。

HCVは、RNAウィルスで、日本人の約2%がHCVキャリアであるとされています。

主として、輸血により感染して、急性肝炎の発生後、約半数が慢性化して、その一部が肝硬変、肝ガンへと移行します。

日本では、年間約2万人に肝ガンが発生してその中の6割がHCVで、3割がHBVが関係しているのではないかと言われています。

現在では検出精度が上がり、HCVが輸血で感染する可能性は低くなりました。

・ヒトパピローマウィルス(HPV)と癌

このウィルスには良性型と悪性型があります。

ヒトパピローマウィルスは、主に人の皮膚や粘膜に出来る良性腫瘍を作るウィルスです。

HPVの仲間は多く、約70種類が確認されています。

皮膚に感染する皮膚型のタイプと粘膜を好む粘膜型があるとされています。

HPVの仲間はそろぞれ特徴のあるイボを作ります。

HPVが関係する癌には、子宮頸ガンや陰茎ガン、イボを持つ患者に発生する皮膚がんがあります。

これらの多くのガン細胞の中には、特定タイプのHPV遺伝子がみられるとされています。

このようにHPVのうち、ガン細胞中にみられるタイプを悪性型、通常のイボや尖形コンジロームなど良性の腫瘍にみられるタイプは良性型と分類されています。

このようにHPVウィルスが子宮頸ガンEV症の皮膚がんなどに関係しているとされる最大の理由は、ガン細胞中に特定タイプの悪性型パピローマウィルス遺伝子が高頻度に確認をされているからです。

また、その他には下記の理由があげられます。

1:悪性型のキャリアは癌の発生率が高い。

2:HPVにはガン遺伝子があり、悪性型は良性型に比べてガン遺伝子の機能が強い。

3:ガン細胞の中に、ガン遺伝子からつくられたタンパク質がある。

4:子宮頸ガンから取り出した細胞で、HPVのガン遺伝子機能を抑えると細胞増殖能力が低下すること。

・HPVの接触感染

HPVは、接触により感染しますが、悪性型が感染しても必ずガンになるとは限りません。

ガン化に至るまでは感染後数十年の潜伏期があるしガンが発生するのは感染を受けた人の一部です。

・FBウィルスの関係するガン

EBウィルスは、ヘルペスウィルスの仲間で、ほとんどの人に潜伏感染しています。

このウィルスはバーキットリンパ腫や、上咽頭がんの発生に密接に関係しています。

バーキットリンパ腫とは、Bリンパ球がガン化する病気で中央アフリカやニューギニアの子供に多発しています。

これらのガン患者の98%から、EBウィルス遺伝子とその遺伝子産物が確認されています。

一方、上咽頭がんは中国南部やアフリカの一部の地域などに多発しこうしたガンのほぼ全てにEBウィルスが存在しているとされています。

EBウィルス遺伝子は、ガン遺伝子と考えられる遺伝子を持っています。

ガンの発生には、こうしたウィルスが持つガン遺伝子の働きに加えて生活環境やEBウィルスに対する免疫能力の低下人種的遺伝要因などが関係しているものとも考えられます。

・成人T細胞白血病とHTLV-1

HTLV-1、このウィルスは遺伝子としてRNAを持つレトロウィルスの仲間です。

このウィルスは、母乳、輸血、性交などを通じて伝播してTリンパ球に感染します。

HTLV-1ウィルスの遺伝子は、ウィルス自身がもっている、逆転写酵素と呼ばれる特殊な酵素によってDNAの形になった後、細胞のDNAに組み込まれます。

感染した人は一生涯HTLV-1キャリアになります。

日本でのこのウィルスのキャリアは100万人いるとされています。

これ等の内、1000人に1人に成人T細胞白血病が発生すると言われています。

この白血病はTリンパ球がガン化したもので、40歳以降に多く発症します。

このウィルスの遺伝子には直接ガン化する遺伝子はありません。

この遺伝子が感染したT細胞は、増殖が著しく促進されT細胞がガン遺伝子の活性化や抑制遺伝子の不活性化などにより

一部の細胞がガン化するのではないかと考えられています。

・ウィルスがガンを引き起こす4つの仕組み

ガンウィルスによってがん化した細胞のほぼ全てにウィルスの遺伝子があります。

1:ウィルスがガン遺伝子を持ち、この遺伝子の働きにより細胞がガンになる場合。

2:ウィルスの遺伝子が細胞側の特定の遺伝子に働きかけその活動を変化させガン化に向かう場合。

3:ウィルスの遺伝子活動をコントロールする部分が、細胞側の特定遺伝子の近くに組み込まれ細胞側のガン遺伝子が活性化する場合。

4:ウィルスの遺伝子が細胞側遺伝子に組み込まれる過程で正常な状態に保つために必要な遺伝子が壊れることでガン化する場合。

以上の4つのケースでは、1の場合感染後早期にガン化が見られ

それ以外に場合は、ガン細胞が出現するまでに長期の潜伏期がありガン化の頻度も低くなるとされています。

・ガン遺伝子がある場合

SV40,ポリオーマウィルス、アデノウィルスなどのDNAウィルスの場合は1に分類されます。

これらのウィルスのガン遺伝子には正常細胞の中にあるRBやP53遺伝子などのがん抑制遺伝子の機能を抑え、細胞の増殖を暴走させる働きがあるとされています。

HPVのガン遺伝子にも同じ機能があるとされています。

一方の肉腫ウィルスや急性白血病ウィルスなどのRNAガンウィルスの場合は、ウィルスにより様々なガン遺伝子を持つとされ、1のケースの相当するとされています。

・ガン遺伝子が無い場合

リンパ性白血病ウィルスの場合、ガン遺伝子が見当たりません。

この場合は、2,3,4などの原因により細胞のガン化が起こると考えられています。

・ウィルス感染だけではガンは発生しない

ウィルスが関係すると考えられるガンでは、潜伏期間を経て細胞の一部ががん化します。

人間の細胞ががんに対する複雑な防御機能を持ち、ガン遺伝子の活動のみではガンにならないよう作用していると考えられます。

細胞のガン化には、様々な遺伝子の変化が積み重なりガン化することが考えられますが、ウィルス感染によりガン発生のリスクが高まることは確かです。

このページの先頭へ