A群溶血性連鎖球菌①

A群溶血性連鎖球菌②

(提供元:国立感染症研究)

連鎖球菌とは、レンサ球菌属に属するグラム陽性球菌である真正細菌の総称で、一つ一つの球菌が規則的に、直鎖状に配列して増殖し、連なった鎖のように見えるため、もう一つのグラム陽性球菌のグループであるブドウ球菌との対比から連鎖球菌と名付けられました。

一般に呼吸によるエネルギー産生は行わず、酸素の有る無しに関わらず、乳酸発酵によってエネルギーを得ます。

人の感染症の原因菌として最もポピュラーな細菌で、咽頭炎、扁桃炎、リンパ管炎などをおこします。

潜伏期は2~4日とされ、典型的な症状は、急性の咽頭痛で始まり、物をのみこむ時の痛みが現れます。

その他、関連症状として、頭痛、倦怠感、発熱および食欲不振が現れ寒気もしばしば現れるとされ、悪心、嘔吐および腹痛は小児で一般的に認めらるようです。

連鎖球菌は上気道に常在し、各種の化膿性疾患の一次起炎菌となり、化膿性レンサ球菌とも呼ばれていて以下のような感染症をおこすことでも知られています。

感染経路

人から人への感染経路は、咳などにより空中を漂う唾液と鼻腔分泌物によって感染を広げ、人が集まる場所で感染しやすく、職場、学校や家庭で感染する可能性が高くなります。

また、感染しても適切な抗生物質投与を受ければ治療開始後24時間で人に感染する可能性は無くなります。

一方、トビヒの形で発症する場合は、感染経路は皮膚の接触感染で広がり、夏場に多く見られ、 皮膚が多く露出され擦過傷や虫刺されが起きるときに発症しやすいです。

ただ、溶連菌は無傷の皮膚を貫通して侵略できないため、蚊に刺されたところや外傷や火傷の部位から侵入するようになります。

指爪および肛門周囲部は溶連菌が常在しやすく、トビヒの原因になることもあるので特に注意しましょう。

種類

レンサ球菌は、まずその溶血性によりα、β、γ溶血性の3群に分けられ、α溶血性、β溶血性、γ溶血性に分類され、β溶血性レンサ球菌は、更にA群とB群他約20種類に分類されます。

α溶血性

肺炎球菌

形状は2個の楕円形の菌が長軸上に並ぶランセット型双球菌で、分類上はStreptococcus属に分類され、グラム陽性球菌で健常な方でも上気道に50~60%にみとめられます。

上気道に存在する肺炎球菌が、分泌物とともに吸引され、肺胞腔で増殖すると、肺胞毛細血管の透過性が亢進し、タンパクに富む滲出液と赤血球が肺胞腔内に充満します。

肺炎球菌による感染症では、肺炎、まれに敗血症、心内膜炎および化膿性髄膜炎があります。

症状

肺炎に先だって数日前から鼻水、のどの痛み、咳をみることがよくあり、発症は急激で、寒けやふるえを伴って39℃の発熱がみられ、その際、胸痛が自覚されることが多いようです。

咳は強いですが、痰は初めは少なく、そのうち肺出血を反映して特徴的な「鉄さび色」となります。

また、発汗が多く、食欲低下に加えて意識低下をみる例もあります。 

緑色連鎖球菌

緑色連鎖球菌は、口腔内に常在する弱毒菌の一種であり通常は健康を害する菌ではありません。

しかし、常在菌と考えられる緑色連鎖球菌とよばれる一群の菌が、歯を抜いた場合などに血液の中に入り、心臓に感染してしまうことがあります。

抜歯などの処置に関連して亜急性型細菌性心内膜炎や歯性感染の起炎菌になるほか、悪性腫瘍に対する化学療法中に敗血症の起炎菌となることも知られています。

これは、心臓の中の血液の流れが先天性紆型や弁膜の障害により乱れている場合に限られます。

β溶血性

A群溶血性連鎖球菌感染症

A群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus : GAS : A群溶連菌)は、しばしば、のどや皮膚に見られる細菌です。

健常者が、のどや皮膚にこの細菌を持っていても何の症状もない場合もあります。

症状をよく起こす場合としては、咽頭炎(のどの炎症)膿皮症(皮膚の炎症:伝染性膿痂疹(とびひ)とも呼ばれ、黄色ブドウ球菌による場合もあります)があります。

A群β溶血性連鎖球菌が、通常存在しないところ、例えば、血液や筋肉や肺といった場所にまで、この細菌が入り込み、重症のA群β溶血性連鎖球菌感染症を引き起こすことがあります。

咽頭炎(のどの炎症)

A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎は、潜伏期は一般に2~4日で、突然の発熱・のどの痛みで始まります。

のどは赤く腫れ、扁桃腺は膿を持っているように見え、その他、発熱、咽頭炎、扁桃炎、苺舌と菌が産出する外毒素による赤い発疹を認める場合もあります。

咽頭部の細菌検査でA群β溶血性連鎖球菌が確認された場合、有効な抗生物質を菌が消失するまで投与し、続発して起こる可能性のあるリウマチ熱や糸球体腎炎をさけることができます。

膿皮症(皮膚の炎症:伝染性膿痂疹(とびひ)

伝染性膿痂疹(とびひ)は、湿疹や引っかき傷などの小さな傷に菌が付着・侵入して感染します。

始めは、水疱・膿疱を形成し、次に破れて痂皮(かさぶた)となり、かゆみがある場合があり、かきこわしていると患部は急速に広がります。

水疱の内容にもA群β溶血性連鎖球菌は存在するので、それが付着する恐れがある、タオルや下着は別にしたほうが良いでしょう。

痂皮(かさぶた)にもA群β溶血性連鎖球菌は存在するので、扱いに注意してください。

治療には有効な抗生物質を用い、痂皮(かさぶた)がなくなるまで治療します。

侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症

侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症では、ショックや肝臓・腎臓等の臓器の働きが悪くなる臓器不全を起こしてしまうと、致命率が高くなります。

早期診断・早期治療が治癒率を高めるため、A群β溶血性連鎖球菌が体の組織内に入り込むきっかけとなる、A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎や創傷のA群β溶血性連鎖球菌による感染に対しては早めにきちんと医療機関で治療を受けましょう。

特に、抵抗力が少ない癌患者・糖尿病患者・腎臓透析患者・ステロイド使用の患者等は、特に注意が必要です。

予防

A群β溶血性連鎖球菌に感染した人の、鼻やのどから出て来る菌が、周囲の人の鼻やのどなどの粘膜に付くことによって感染するか、皮膚の感染部から菌が出て、菌を手によって自分の口や鼻に運んでしまって感染することが考えられます。

また患者に咳症状があれば、咳によって生じた飛沫によって感染する可能性もあります。

予防のためには、菌を手によって自分の口や鼻に運ぶことを避けるため、良く手を洗うことが大切です。

また、有効な抗生物質による治療を始めてから、周囲の人を感染させる力がなくなるまで24時間かかるとされているので、A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎については抗生物質による治療を始めてから少なくとも24時間経過するまでは、仕事や学校を休み外出を控えた方がよいでしょう。

伝染性膿痂疹(とびひ)については、予防のためには、手と皮膚の清潔が大事です。

こどもでは、虫刺されやカゼがきっかけとなることがあり、引っかき傷をつくらないように注意しましょう。

また、患者は、学校などの集団生活の場では、患部を包帯などでしっかりと覆った方が良いでしょう。

劇症型A群β溶血性連鎖球菌感染症については、1-7日のA群β溶血性連鎖球菌咽頭炎あるいは創傷のA群β溶血性連鎖球菌感染に続発することがあるとされています。

予防のためには、A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎あるいは創傷については、放置せず、医療機関で適切な治療を受けましょう。

B群β溶血性レンサ球菌(GBS)感染症

B群レンサ球菌感染症は、健康な妊娠・出産のために注意したい感染症の一つです。

B群レンサ球菌(Group B Streptococcus : GBS )は、膣内に常在することのある細菌で、妊婦以外では、膀胱炎などの尿路感染症でもおこさない限り問題となることは少ないですが、出産時にこのB群レンサ球菌が膣内に存在すると、生まれる新生児に敗血症、髄膜炎、肺炎などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがありえることが知られています。

この母から子への感染が問題とされ、特に新生児では、命にかかわる感染症を起こすことがあります。

B群連鎖球菌は、新生児における、敗血症や髄膜炎、肺炎の主要な原因菌の一つで、髄膜炎が死亡原因となることもあり、髄膜炎の後遺症として、聴力や視力が失われたり、運動や学習の障害などが残るこどももいます。

その他、B群連鎖球菌は、新生児だけでなく、妊婦、老人、糖尿病・肝臓疾患の患者等でも感染症を起こすことがある細菌です。

妊婦では、膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)、死産を起こすことがあります。

妊婦以外では、尿路感染症、敗血症、皮膚・軟部組織の感染症および肺炎を起こすことがあり、死亡例もあります。

老若男女を問わず、多くの人が、体にB群レンサ球菌を持っていますが、なんの症状もない場合が多いのが普通で、これらの人々は、保菌者と呼ばれることがあります。

成人は、何の症状もなく腸・膣・のど・膀胱にB群レンサ球菌を持っていることがあり、B群連鎖球菌が人体で通常よく見られるのが腸の中で、約3分の1の人で見られますが、何の症状も見られないのが通常です。

稀に、のどにも見られることがあり、約5%の人で見られます。

膣にも見られますが、部位的に腸のB群連鎖球菌が広がりやすいとされています。

腸以外の部位では、B群連鎖球菌の存在は一時的で、あるとき検出されても次回は検出されず次々回では再び検出されるということがよくあります。

膣内や直腸内に見られることから、性的接触によって人から人へと広がる可能性もあるので注意しましょう。

また、有効な抗生物質の使用は、一時的にB群連鎖球菌を体から排除するかもしれませんが、使用終了後に再びB群連鎖球菌が見られるのが通常です。

予防

新生児のB群レンサ球菌感染症の大部分は、分娩時の母親への抗生物質の点滴投与により、予防することができます。

B群レンサ球菌感染症の赤ちゃんを以前に出産したことのある妊婦や、今回の妊娠中にB群レンサ球菌による尿路感染症や細菌尿があった妊婦も、破水・分娩時に点滴による抗生物質療法を受けることが、アメリカ合衆国では勧められています。

なお、破水・分娩開始時に母親のB群レンサ球菌の保菌について明らかでなくて、次のいずれかの条件にあてはまる場合にも、破水・分娩時に抗生物質療法を受けることが、アメリカ合衆国では勧められています。

γ溶血性

γ溶血性レンサ球菌は、口腔内等に常在する菌である。歯性感染症や化膿性リンパ節炎などの起炎菌となる可能性はありますが、この群には臨床的に重要な菌は少ないとされています。

その他の腸内細菌の種類

このように人体と共存している腸内細菌にも人体に有害な作用をもたらす細菌群があり悪玉菌と呼ばれてもいます。

また、ブドウの房のような形をしたブドウ球菌は、通常は表皮や鼻腔や腸内に幅広く分布しますが病原性のある黄色ブドウ球菌が繁殖すると食中毒の原因となります。

プロバイオティクス

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