皮膚のアップ

皮膚は外側から、表皮、真皮、皮下組織で構成され表皮の90%以上を角化細胞が占めます。

表皮は外側から角化層、透明層(手のひら、足の裏の皮膚にのみ見られる)顆粒層、有棘細胞層、基底細胞層に分けることができます。

基底層で新しく作られた基底細胞は、皮膚表面に向かって有棘細胞へと変化し、ケラチン繊維をつくりながら、硬くなり、死んだ細胞となってはがれ落ち、このサイクルを皮膚の新陳代謝と言います。

この表皮の基底細胞層にはメラニン色素をつくる色素細胞が点在しています。

皮膚がんとは、この表皮から発生するがんを指します。

有棘細胞がんや基底細胞がん、色素細胞から発生する悪性黒色腫(メラノーマ)などがあります。

この中で、最も発症率の高いがんが基底細胞がんで、ほとんど顔面や頭部に生じますが、体の他の組織や臓器には転移しないといわれています。

この中で最も悪性度の高いものが悪性黒色腫で、ごく初期から転移します。

また、黒色のほくろをつくっている細胞がメラノーマを発症することもあります。

真皮には線維組織や血管、リンパ管があり、皮下組織、真皮、表皮には汗や脂をつくる汗腺や皮脂腺があり、そこから汗腺ガンや脂腺がんなどが発生することがあるともされます。

これらを皮膚付属器のガンと呼びます。

皮膚の異常はガンの早期発見に欠かせない病変と言えます。
   

皮膚がんの種類

有棘(ゆうきょく)細胞がん

有棘細胞がんは男性に多く、加齢とともに増加し、70歳以上の患者が約6割を占めています。

有棘細胞がんの発生の大きな要因は紫外線とされています。

つまり、紫外線を長期間浴びるほど、リスクは高くなります。

発生する部位は、顔や首、手の甲など日光の当たる部分が多いとされます。

紫外線を長期間浴びたことで発症する皮膚疾患があり日光角化症と言います。

60歳を過ぎてから発症することが多く、老人性角化腫とも呼ばれています。

日光角化症は有棘胞がんの早期の病変と考えられ、一部は有棘細胞がんへと移行する場合もあります。

その他、やけどや外傷の瘢痕、なおりにくい皮膚の潰瘍、放射線による皮膚炎なども有棘細胞がんの原因となります。

また、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の皮膚への感染が有棘細胞がんの発症の原因とも考えられるようになりました。

有棘細胞がんの症状

発生部位や発生原因によってさまざまですが、普通はかゆみや痛みはありません。

ただ、細菌感染もおこしやすく、細菌に感染して炎症があると軽い痛みや発赤、悪臭などがみられます。

皮膚の症状として、紅色をした皮膚のふぞろいな形に盛り上がり、びらんや潰瘍を伴っています。

さらに出血しやすく、つまむとしこりとして感じられます。

基底細胞がん

高齢者ほど発症率が高いことが特徴です。

紫外線が発がんの要因と考えられ、ほとんどが顔面や頭部に発生し皮膚がんの中では最も発症率の高いがんとされます。

局所で再発を繰り返すことが多く鼻や唇の一部が欠損することもあります。

この基底細胞がんは、進行すると皮膚だけでなく筋肉や骨などの組織へと浸潤していきますがリンパ節や内臓への転移は稀とされます。

初期症状として、黒色から黒褐色の盛り上がった皮疹で痛みやかゆみもなく、ほくろと間違えることが多いので注意が必要です。

進行すると徐々に大きくなり、中心部が陥没して潰瘍となり、その周辺部は堤防状に隆起し、黒い丘疹が縁取る腫瘤となります。

中心部の潰瘍の部分はかさぶたができ出血しやすい状態となります。

これが結節・潰瘍型と呼ばれるがんで、基底細胞がんのほとんどがこのタイプとされます。

悪性黒色腫(メラノーマ)

日本国内では、年間1500人から2000人程度で、40歳代から増加する傾向があります。

このがんは皮膚がんのなかで最も悪性度の高いがんで、初期からリンパ管や血管にのって全身どこにでも転移します。

悪性黒色腫(メラノーマ)は下記の4病型に分類されます。

悪性黒子(こくし)黒色腫

顔面や頸部など紫外線にさらされる露出部に発生し、ゆっくりと成長し最初に褐色斑ができ、やがて黒色となります。

やがて黒色斑ができ、次第に拡大し、一部に硬結や腫瘤が出現してきて悪性黒色腫になります。

高年齢の人がかかりやすく、発生頻度はメラノーマ全体のうちの8%とされます。

がんの成長が遅いため、治癒率もメラノーマの4病型のなかでは最も高い数値です。

表在拡大型悪性黒色腫

50歳を過ぎると発症しやすいとされますが、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で発症します。

全身のどこにでも発生する可能性があり、少し隆起した黒色か褐色などの色素斑ですがやがて隆起し色調も黒が多くなります。

成長が比較的遅いほうですが、悪性黒子黒色腫よりは治癒率は低いといわれています。

結節型悪性黒色腫

発症しやすい年齢は50歳代で、腫瘍の成長が早く、転移も多い、最も悪性度が高い病型です。

全身どこにでも発生し、はじめから急速に成長する転移の速いがんで病変部は、はじめから半球状、山なり、有茎(ゆうけい)状、扁平隆起状と盛り上がっています。

色調ははじめ褐色から黒褐色ですが、やがて濃黒色となったり、濃淡が混じったりするようになります。

末端黒子型黒色腫

日本人に多いメラノーマで、4病型の40%以上をしめます。

幅広い年齢層に発症しますが一般に40~50歳代に最も多く発症します。

最も発症しやすいのは足底で、その他、手のひら、指の間、外陰部、爪の下などにも発生します。

症状は悪性黒子黒色腫とほぼ同じで、斑状から始まり、結節、潰瘍へと進んでいきます。

たこやうおの目とまちがわれがちですが、これらとは周囲に黒い斑がある点で異なります。

腫瘍の成長は結節型黒色腫よりゆるやかで結節型黒色腫より治癒する確率は高く、表在拡大型黒色腫より低いと考えられています。

皮膚がんの検査

皮膚がんの場合、まず肉眼による観察と触診で診断しますが、皮膚がんを確実に診断するには、皮膚の一部を切除し顕微鏡で検査皮膚生検を行います。

メラノーマの場合、早期にはホクロやイボと見分けが難しい面があります。

メラノーマはメラニン色素を作るメラノサイトが癌化したものなので、黒や茶色の病変になりまが、皮膚にはホクロや脂漏性角化症など似た色をした病変が多く、基底細胞がんでも似たような色になります。

皮膚がんの専門家でもでも、正しく診断できる割合は8割くらいといわれています。

メラノーマの場合、早期に診断がつかないと命に関わってきますので従来は生検が行われていました。

メラノーマは極めて転移をしやすいことから生検が転移のリスクを高めてしまうため、基本的には行われません。

最近ではダーモスコピーという装置による色素性病変の鑑別が行なわれています。

この方法は皮膚の患部にゼリーを塗ってガラス板で圧迫し光を当てて拡大して見る方法です。 

これにより早期からメラノーマの診断ができるようになりました。

また腫瘍の厚さの測定方法としてエコー検査も有効で胸部レントゲン、腹部超音波検査、CT、MRIなどの検査によってがんの進行度や他の臓器への転移の有無を確認し、それによって治療方針を決定します。 

ガン検査の種類に関する詳しい解説はコチラ

治療

外科手術

有棘細胞がんや基底細胞がんは外科手術により病巣を完全にとり除くことが最も有効です。

がんが早期に発見されて外科手術を受けることにより、治癒率は100%に近くなります。

メラノーマの場合も、基本は手術ですが、原発病巣の周囲にもがんがみられることが多く患部とその周囲を大きく切除することが必要です。

また、がんが周囲に広がっている可能性があるときにはまわりのリンパ節も切除します。

放射線治療はメラノーマにはほとんど効果がなく、補助的に利用されます。

顔面など目立つ場所の切除を行う場合、手術後大きな傷跡が残らないように配慮しますが傷が大きくなるときは、本人の背中や尻の皮膚を移植することもあります。

手術の方法としては、メスによる切除のほかに、電気乾燥法、顕微鏡下手術、凍結手術、レーザー手術などもあります。

レーザー治療は比較的新しい方法でがんが皮膚の外側の層にとどまっているときにもっとも有効とされています。

放射線治療

有棘細胞がんや基底細胞がんの1期および2期の病変に対しては根治を目指した放射線治療が行われます。

2期で5cm以上の病変や3期では手術療法が選択され、完全に切除できなかった場合には放射線治療が追加されます。

また,合併症などため手術が不可能な場合には、これらに対しても根治を目指した放射線治療が行われます。

リンパ節への浸潤、神経周囲への浸潤、骨や軟骨への浸潤広範な骨格筋への浸潤などが認められた場合には術後照射がおこなわれます。

メラノーマに対しては1~3期の原発巣には根治切除が行なわれるため基本的に放射線治療が中心となることはありません。

手術では大きな欠損を生じる腫瘤径の大きなメラノーマに対しては放射線治療が行われることもあります。

放射線治療のなかでもメラノーマに対しては速中性子線や重粒子線治療で効果を示すことがあります。
 
また、放射線治療と併用して温熱療法を行うことがあり、これは転移を防ぐには効果があるとされています。

抗がん剤治療

皮膚がんの治療は、手術による切除が最も有効であり早期に発見された場合切除による完治が期待できます。

抗がん剤治療は術後の再発防止など補助的な治療法と考えられ、その他にも免疫療法があり、病状により医師が判断します。